桐野夏生 「光源」

私は桐野さんの作品は「OUT」だけ読んでいて、文体の冷たさとOUTで言えば邦子のような、うまくいえないけど女むき出しの女*1をミもフタもなく描く人だなぁと言うものでした。
そのミもフタもない感じは多分この人が階層を意識しているからだと思う。
そしてもう一つ、これは後から思ったのだけど、主人公雅子の諦念、生きることに疲れた感じ、それと引き換えの強さ、その悲しい強さが引っかかった。
多分この人が書く問題はこれから私が生きて行くうえで直面する問題だ。
そういう読者が結構いるのかなぁと思う。

それでまず「光源」
簡単に言うと映画「ポートレート24」に関わった新人監督、カメラマン、プロデューサー、役者たちの思惑が交差する群集劇でしょうか?
読んでて思ったのは描写力に凄まじさ
特に35歳の元アイドル、井上佐和の描写がすごかったです。
私は30過ぎてヘアヌード写真集を出す女優もそれを買う客に心理もイマイチわからないんですけど、女優にとっては商売道具、奇麗事いってらんないのよ「生き残るために」感がすごく出てました。こういうガツガツした女性描写が読みたいんですよ私は!と思いました。
桐野さんは多分すごく冷たい目線で観察してるんだなぁと思いました。
登場人物に対し善悪の判断をしてない。皆がそれぞれの思惑で動いてる。
そのギラギラした感じが好きですわ。

ただこの作品、構成が変です。物語としてみると失敗?と思ってしまう。
しかも第五章 後日談にいたっては、ほとんど別の短編です。
もしかしたら最後は男と女の対決にもって行きたかったのでしょうか?
「OUT」でも最後の雅子とヤクザの対決だけが個人的に違和感*2があったんですけど。

もしかしたら桐野さんの中で女同士がいがみ合ってぶつかり合うその枠の外に本当の敵としての男を設定したのですかね。
ただ、そうなった時の男像がある種、類型的なハードボイルドなヤクザ*3というのが、ちょっとよくわからないところです。こういう人が単純に好みなのだろうか?
強い男のイメージがベタなのが気になります。

*1:美人とは別

*2:いらないんじゃないのこのシーンって感じ

*3:関係ないですけど途中から高見のイメージは哀川翔でした