プライド 一条ゆかり

sightという雑誌で今年のマンガを振り返る企画をしていて、その中で一番面白そうだったので買いました。
簡単にいうとオペラ版ガラスの仮面
しかも父親がリストラされた姫川亜弓の視点から描いてる。
この主人公、麻見史緒がお掃除のバイトで来た音大生の緑川萌と*1オペラを見に行くところから物語が始まります。

この緑川萌の描き方がすごいんですよ。何て言うか北島マヤとやってることは同じなんだけど、それを悪意というか成りあがるための戦術として書いてる*2
なんというか雑草根性の悪いトコを見事に体現している。出世のためなら手段を選ばないわーみたいな、麻見史緒は温室育ちで世間知らずだから、どんどん負けて行くの。
前書きの感じではプライドが大事だよ!って話になる予定なんだろうけど、この一巻の時点では史緒はそのプライドゆえに世間知らずで、だから計算高い萌に負けるんだけど、これからはどうなるんでしょうか?気になります。
しかし、同じ素材でここまで逆のことやられると見事だなぁって思うなぁ、でも今の子ってもちろん私も含めて中産階級の人は麻見史緒の側に感情いっちゃうんだろうなぁって思います、そういう読者層を見越してるのねきっと
昔のマンガでこういうことやったら


貧乏→純真無垢 
 
金持ち→心が寒々としてる


みたいな感じで豊かさ=悪論に行くんだけど、一条ゆかり*3さんはもっと掘り下げてますね。まだ一巻なんで続きが楽しみです。

追記、私は時々ガラスの仮面が終わらない理由について考えるんですけど、あれって作者の関心が明らかに亜弓さんに移ってるんですよね、多分書き始めた若い頃はマヤの気持ちで書けたんだけど、成功して財産もっちゃって亜弓さんの側にいっちゃった自分に途中から自覚してからは敵役とするには関心がいきすぎてる。だから今は両主役みたいな感じになってて、多分達観した月影先生の位置にいかないと終わらないんだろうなぁって思ってる。

*1:父親と行く予定だったチケットで

*2:よく言えばハングリー精神なんだけど、悪くいうと意地汚い、貧乏人の心の狭さ

*3:私は一条さんの作品を多分はじめて読んだんですけど、どうも世の中にはゴージャスという系譜があるような気がしますね。基本的にサブカルちゃんなんで無自覚だったけど、これもまた研究課題です