アイデン&ティティ

アイデン&ティティを観にいきました。
観にいった映画館が繁華街の中にポツンとある小さいトコで作中出てくるライブハウスみたいな感じでよかったです。
映画観の客層は「サブカル」って顔にシールがはってあるような人*1ばっかりで男女半々、木更津の時とは違って居心地がよかったです。
映画の内容はバンドブームに乗ってデビューしたスピードウェイが翻弄されていく青春モノといった感じで、原作のみうらじゅんさんの体験から書かれたものです。
私はもちろん宮藤さんの脚本目当てで行ったのですけど、いやぁ〜ダサい(笑)そしてかっこいい、観てて笑いながら泣き、泣きながら笑いって感じで、やっぱいいわぁって思いました。私はマンハッタンラブストーリーは最後の最後で乗れなかったんですけど、理由はこのダサくてみっともない感じが作品になかったからだと思います。
結局なんだかんだいっても業界人の話だしって感じで*2

観てて思うのはまずこの映画は笑ってもいいってサインがいっぱい出てくるんですよね、で、安心して笑っていると、真剣な芝居のシーンが出てくる、普通だとここで私は引くんだけど、宮藤さんの脚本の場合、その真剣さに中に*3さらに真剣な人間のおかしさを見つけ出しておかしくする、でもそれは茶化してるんじゃないんですよ。真剣にバカやってるかっこ良さとでもいいましょうか。
それが観れるんですよね。
多分すごい高度なギャグなんじゃないですかねこういうのって、シリアスになればなるほど面白いんですから、しかもそれでいて泣ける、「泣き」と「笑い」と「かっこいい」を同時に起こせる人それがクドカン(笑)

それとその意図を田口トモロヲ監督が理解してたのがよかった、これみよがしのギャグってないですからね、最初はボブ・ディランの扱いをもっとコミカルにしようと宮藤さんがしてたらしいですけど、それをみうらじゅんさんと田口さんが抑えたらしいです。でもそれがなお、おかしいですよ。ディランは主人公中島にだけ見えるんですけど台詞のかわりにハーモニカ吹くんですよプヒィ〜ってそれがカッコよすぎておかしいです。
あのニュアンスって原作読んだときはわからなかったんですよ、でも実写でやるとすごくわかりますよね。

あとは書いていたらキリがないので絶対書いておかないといけないなぁって思うのは役者さんがいいなぁってこと、岩本というライバルもそれっぽいし、インタビューに来るゴシップ誌のライターを演じた大杉連さんもよかったです。
女性陣もいいですよ、多分普通の人は「彼女」に目がいくと思うんですけど、私は次々と出てきては中島に食われちゃう*4バンドのおっかけの女の子がよかったです*5。なんかパッとしなくてクイックジャパン読んでそうな感じで、最初の出てくるのが「声」ちゃんで次が平岩紙ちゃんなんですよね。木更津でミー子やってた。
原作だと結構悪意があったんですけど彼女達が演じることで妙なリアリティが出てました。元々私が宮藤さんの興味をもったのはああいう女の子を描けちゃうトコなんですよね。
キャバクラの子もそうだし、普通の脚本家が書くと記号にしかならないんだけど、宮藤さんが書くとえらいことになるんですよね。モー子もそうだし、ただそれが内面が描けてるか?ってなると違う気がするんですよ、多分宮藤さんはわかんないものをわかんないけど面白いものとして書いてるんだと思います。
しかもその書き方が愛情あるなぁって思うんですよね。今度はそういう女の子ばっかり出てくるような話を書いて欲しいです。

しかしこの映画観てて思ったのはサブカルってダサいんだなぁってことで、そのダサさを自覚して使いこなせるから宮藤さんの脚本は面白いんだなぁって思いました。
みんなもっとダサくなれ!って感じです。

追記、それにしてもアイデン&ティティって題名すごいですよねぇ。本来アイデンティティってのは唯一絶対のものであるべきなのにそれを男女二人で表現してて、その題名つけた時点でみうらじゅんさんはスゴいなぁと思います。

*1:しかもみんなちょっとダサい。私もだけど

*2:私は恋愛ってもっと怖いものだと思うし、みっともないことをいっぱいしちゃうけど、それでもしちゃうってものだと思ってる、もちろんそういう部分は何度か出たけど

*3:今作ではロックとは何かと語ったり悩んだり

*4:もしくは食っちゃう

*5:ちゃんとやってたし