下弦の月 ラスト・クォーター 監督・二階健

栗山千明はいい。
彼女の存在がいかに不自然かよーくわかった。
インストールの予告で上戸彩の演技見てたんですけどすご〜く自然だったん
ですよ。子役の子も。
それに較べるとえらい芝居かかってて、日常の演技ってのができない人なんだなぁ
って思った。
逆に言うと普通に喋ってても何か凄みがあるというか怖いというか(笑)
後半日常シーンが消えてイメージの羅列みたいになるんですけど、そこが一番いいんですよね。
普通に会話してるシーンが一番うそ臭かった。
ホラーかコメディにしか居場所がない大物感を漂わせてますね。

でも映画としてはというより物語として正直辛い。
最初の30分くらいいらないと思う。
あの幽霊屋敷に舞台を限定して、そこに猫を探して迷いこんだ女の子
がピアノを弾いてる頭のおかしい美少女と出会う。
それだけで充分だと思う。
それで女の子の友達が心配して来たら一人ごと喋ってて、女の子にしか彼女が見えなくて
そこから栗山千明のことぉ調べていっていろいろわかるみたいな。
そしたら栗山千明の彼氏が浮気してたこととか家庭崩壊気味だとかの設定が効いて来て
彼女が現実から逃げるために前世の恋人の妄想に憑依されてるってことが
生きてくるのに。
これ恋愛映画じゃないと思う。
狂女モノというか(笑)
ってそんなジャンルないけど。
何より許せないのが成宮演じる彼氏だよ。
台詞よく覚えてないけど
「たしかに俺にも原因があるけど(現実に)戻ってくれないのはアイツの弱さだ」
みたいなこと言うんですよ。
しかも、コイツがムリヤリ現実に戻そうとして栗山千明に憑依していた女の幽霊に彼女の恋人のアダムが死んでたことを伝えるんですよ。
全部元凶お前じゃん。しかも反省も後悔もしてなくて。
もう「私の全存在をかけてあんたを否定してやる」って感じですよ。
私心底あのヒロインの同情したもん。
だって現実に帰ってくる理由、一個もないでしょ。
すくなくともストーリー上での説得力はなかった全く。
自分の親友と浮気したこと結局許したの?
家族の母方の娘の問題は?
もし帰ってくるなら、アダムとかが成仏するより、家族とか恋人との関係が
ちゃんと構築されることの方が大事だと思うんだよなぁ。
少なくとも大島弓子さんならそこを描くと思う。
何もドラマが完結してないのにムードだけで流した感じ
だったらせめて最後に彼氏振るとかさせてほしい。
そして親も男もダメだ私は一人で生きるんだみたいな。
アイツ絶対また浮気すると思う。
でもあんなもんなのかな?最近の若いもんの恋愛感は。
多分矢沢あいの恋愛感でいい男はモテるから浮気も仕方ないみたいのがあるんだろうなぁ。
見てて思ったのは大島さんの「四月怪談」とか「秋日子かく語りき」もそうかな?
それの矢沢あいバージョンだったのかな?と思った。
ただ大島さんだと影から見守ってた気のやさしいオトコノコがいて、その男の子とのか細い関係で何とか現実とつながれる、帰ってこれるみたいのがあるんだけど。

それにしても見てる間ティム・バートンビートルジュースとかシザーハンズ
思い出してた。ビートルジュースのリディア?っていうウィノナ・ライダーが若い頃演じてた
幽霊が見えるオカルト少女がいるんだけど、彼女もまた家族に絶望してるんですよね。
それで異界の存在に引かれるみたいな感じで。
あのアダムってのも甲斐性なしでさ、連れてってやれよって感じ。

帰りに恋の門のチケットを買った。
こっちの方が好みっぽい。