めぐりあう時間たち

id:TRiCKFiSHさんに推薦されて鑑賞。
すごく面白いけど、言葉にしようとすると難しいです。

話は3つの時代の3人の女性の話で、それぞれがその時代で悩みを抱えながら生きているというもの何ですけど、多分ストーリーにはあんま意味ないんだと思います。
とりあえず面白かったのはカットが変わる瞬間で。
まぁ映画の常套手段で例えばコップをもちあげて、おいたら別のシーンに行くみたいなつなぎ方があるんですけど、それで時間軸(つまり話の中で十年二十年飛ぶ)まで変えてるんですよ。
この変わり方が絶妙で気持ちいいです。
ただネットの感想*1を見てると「わかりづらい」という方が結構いて私も正直人間関係とかさっぱりわかんなかったんですけど、そうやって3人の個性や時代をごっちゃにシャッフルすることで伝えんとすることが明確になったなぁと思いました。
多分この3人の物語で一つなんですよ。
一見別々の物語を紡いでるように見えて実は同じことを言おうとしている。
それが何か?何を言おうとしているのか?

私にはこの3人が壊れていく過程がすごくわかりました。
平和な日常そのものが彼女たちにとっては安らぎでありながら抑圧である。
作中、何度もケーキを作ろうとして失敗するシーンが印象的でした。

最近「しあわせになりたいなんて考えなければしあわせなのになぁ」
と考えるんですよ。
例えば今あなたは「しあわせ」になりたいですか?って聞かれたら多分ほぼ100%の人(特に女性)が「はい」って答えるんだと思うんですけど、もしそこで「私はしあわせじゃなくてもいいです」って言えたらその人はしあわせだと思うんですよね。
むしろ「しあわせになりたい」と思い幸せになるためにあれやこれやと努力して苦労して、やっと彼をみつけたと思っても「いや違う、もっと幸せにしてくれる誰か」がいると思って、またって感じで。
これを「しあわせ地獄」と言うんですけど。
で、そうやって手に入れたはずの「幸せ」にも馴染めなくて。
何で馴染めないか?はその人にはわかるんですよね、もう
結局そのしあわせは人から与えられたもので自分のものではない。
私のしあわせは私しかわからない。
これに気付いてしまったら、もう自分の意思で生きてくしかなくて、そしたら孤独で辛い日々なんだけど、でもそうやって生きていくことしかできないの私は!
そういう映画なのかなぁ?と思いました。

ちょっと不満だったのは最後にバラバラの時代に生きていた女性が出会うんですけど、これはいらなかったような気がします。
別々の時代で何の接点もない人間が同じような悩みを抱えて生きてる。
この事実だけで、何か救われるような気がするんですよね。
だから途中で出てくる小説と現実が実は入れ子構造*2になってるみたいな伏線も私には余計でした。
多分見るたびに印象が変わる作品だと思いました。

*1:ある映画感想掲示板だと男の人はわかんないって意見がほとんどだった、その辺り桐野夏生さんの共通するのかなぁ

*2:キーワード見てたら私の勘違いのような気がする。