サウンドトラック 古川日出男

2009年のヒートアイランド現象により熱帯化した東京で繰り広げられるトウタとヒツジコとレニの物語とでも言えばよいのでしょうか?
物語はトウタとヒツジコの幼少期から追いかけていくんですけど、個人的には中盤のヒツジコが踊りに目覚めて仲間が増えて行く過程が面白かったです。
基本的にアラブ人街と化した西荻でサバイバルするトウタの物語
踊りの力に目覚めたヒツジコとその力に感染する少女達の物語
傾斜人という地下に住む人間とクロイというカラスと端末携帯の写真銃(多分ハンディカムの映写機かな?)で戦うレニの物語の3つの物語にヒートアイランド化して環境が激変していく近未来の東京の描写がクロスしていくんですけど、レニの物語がちょっとブっ飛びすぎててそこだけ荒唐無稽すぎて脳がついていけませんでした。
しかもトウタとヒツジコの物語は絡まないですし、そういう細かい不満はあるんですけど、読んでる間は古川さんのイメージ喚起力の圧倒されひたすら読んでました。
どうにも古川さんの作品っていつも終わり方がアレ?って感じなんですよね。多分この人は物語には興味ないような気がします。もしくは描写力が構成力を超えちゃってて物語を捻じ曲げてしまう。その意味で、ちょっと大友克洋っぽいなぁとか思います、後半のカタストロフはAKIRAを連想しましたし。
突飛なイメージを小説に求める方は是非読んで欲しいです。

追記、途中からヒツジコ=栗山千明のイメージで読んでました。でも映像化したらいくらかかるんだか(笑)
あと音楽を理解できないトウタ*1が主人公の話に「サウンドトラック」という題名をつくり音楽を作る話に「沈黙」とつける古川さんのセンスっていいなぁ。
個人的には続編があるような気がするんだけどないかな?

*1:この設定に意味があったのか?