電気グルーヴと尾崎豊

今日、電気グルーヴのベスト盤「SINGLES and STRICKS」を買いました。
正直、全部持ってるので今更聞く必要ないんですけど、聞いたらやっぱいいっス、歌詞カードに全曲解説がついてるんですけど、これが卓球さんと瀧さんの対談になってて、オールナイトニッポンを思い出してうれしいというか笑ってました。あと結構語り口に影響受けてるなぁとか思って、ちょっといい気分。
古いアルバムは持ってないという方やとりあえず一枚聞きたいって人にはいいんじゃないでしょうか。
で、CD屋さんで他に何が出てるかなぁって見てたんですけど、*1尾崎豊のトリビュートアルバムが出てて、歌ってる人が豪華でびっくりしました。

で、今回触れたいのは宇多田ヒカルがI LOVE YOUを歌ってるんですよね。彼女はデビューの時から尊敬するミュージシャンの名前に尾崎豊の名前を挙げてて当時、結構びっくりしたんですけど、今考えると私(もしくは私の年代)がもってるような尾崎豊、あるいは尾崎豊的なものに対する愛憎って下の世代つまり昨日から書いてる80年代生まれのコたちにはあんまりないのかなぁって思って。

多分私の日記読んでる人はアンチ尾崎豊みたいに思ってると思うんですけど、実は今現在はそうでもなくて「十七歳の地図」はもってて聞けば、それなりにいいなぁって思う程度には評価してるんですよ。
でも尾崎豊が死んでから、どういう風に世間に受け入れられ偶像化され商品化されていったかを知ってるから、そこに加担するような気がして距離をとってたんですよね。

何ていうか、無垢さとか純粋さみたいなものを正直に出したとして、それがそのまま伝わると思ってる無防備さ戦略のなさ、それがヤだったんですよね。

そういうナイーブな感情は下手に出せば、簡単に曲解されて、いずれわけのわかんないトコに持ってかれる。潰される。

あるいは簡単に感化する人間が集まって教祖にされちゃうって感じで。

まぁ死後にどう扱われるか?なんて誰にもわかんないけど、そういう構造というかシステムに対して、あまりに無自覚だったんじゃないかなぁって思う
んですよね尾崎豊に対しては。

ただ、そのシステムについて理解できたのは尾崎豊が死んだからっていうのが私の中にあるから、それ以前に理解できたか?って言われたら疑問だけど。

だからああいうタイプの表現には私は距離をとってできるだけバランスをとろう、流されないようにしようってのが高校の時で、
そのシステムに自覚的で何とか抗ってたのが電気グルーヴだったって気が今ベスト盤を聞いてて思うんですよ*2
実際「電気〜」も「N.O」や「虹」では結構、尾崎豊的な受け入れられ方をしてて、というか私はそういう風に受け取ってたんですけど、オレンジでその毒をまず出し切って、「A」でそういう世の中から距離をとった上で自分達の好きなもの、居心地のいい場所をまず作ろうってスタンスに行くんですよ*3。ただ私はそのあたりから以前までの過剰な思い入れはしなくなって、単純に好きなミュージシャンって位置づけになったんですけど。

とまぁそういうことを思い出しましたね。
この流れは今出てるクイックジャパン佐々木敦さんの文章がすごい的確に書いてます。あれは名文なので是非一読を。

で、話を宇多田ヒカルに戻すと、彼女が尾崎豊が好きって簡単に言えるのは何でだろうって考えるんですよね。
まぁ本人の資質が一番なんだろうけど、上に書いたようなシステムはもう前提となってて、その上で作品やアーティストは別という位置づけなのか?
それともストレートなメッセージを放てばストレートな反応が返ってくるって確信があるからなのか?
似たようなことは綿矢りさ太宰治が好きって言ってたってのにも*4感じてて、もし自分が作家なら太宰好きっていえるかなぁ?
って考えたらやっぱ言えないなぁって思って。

やっぱ彼女たちはそういうナイーブな自己表現に対する抵抗がないのかなぁって思う。それがその世代全体の傾向かどうかわかんないですけど。
で、ナイーブでストレートな自己表現が大規模に受け入れられたのがいわゆるエヴァで、それを14歳で見れたってことは
ナイーブな言い方をストレートに出しても伝わるんだっていう確信がどこかにあって、だから表現に積極的なのかなぁとか思って。

で、そのナイーブさがそのまま政治や戦争を語るトコまで言ってるのが真面目なベタな物言いが目立って、ネタ的な言い方が伝わりずらくなる現状かと。

と、ここまで書きつつ実はあんまり自信がない意見です。
というのは、そういう尾崎豊的な表現に距離をとりたいって思ったのが私の世代全般の特徴とは言いがたいからなんですけど、同じように電気グルーヴがみんなから支持されてたか?って言ったらもちろんそんなことなくて。

何だろ、ナイーブなものに対する距離感と世代とは別の問題なのかな?
もうちょっと考えます。

とりあえずベスト盤はオススメです。

追記、私がはじめて聞いた電気グルーヴのオールナイトニッポンで丁度尾崎豊の死について触れてて「まぁ俺達には関係ないけど」ってさらっと流してて
何なんだ、この人たち?って思ったのが出会い、でその後「オールスター家族対抗蛇合戦」がラジオから流れた。
だから電気と尾崎豊はつい比較したくなってしまう、個人的動機。

*1:いっしょに石野卓球のソロアルバムまで出すなって感じ

*2:ただ、それが成功したかは電気グルーヴが世間からどう受け取られてるかを見れば判断はつくわけで、勝ってもいないけど負けてもいないってのが現状かな

*3:これは電気が選んだ音楽がロックでなくテクノだったからうまくいけたんですけど

*4:ただこれは大塚英志さんの文章からの情報で一次情報は私は知らない、間違ってたら訂正します