ファスト風土化する日本 郊外化とその病理 著・三浦展

のどかな地方は幻想でしかない!地方はいまや固有の地域性が消滅し、大型ショッピングセンター、コンビニ、ファミレス、カラオケボックス、パチンコ店などが建ち並ぶ、全国一律の「ファスト風土」的大衆消費社会となった。
このファスト風土化が、昔からのコミュニティや街並みを崩壊させ、人々の生活、家族のあり方、人間関係のあり方もことごとく変質させ、ひいては人々の心をも変容させたのではないか。
昨今、地方で頻発する不可解な犯罪の現場をフィールドワークしつつ、情報社会化・階級社会化の波にさらされる地方の実情を社会調査をもとに探り、ファスト風土化がもたらす現代日本の病理を解き明かす。

目次
第1章 のどかな地方は幻想である
第2章 道路整備が犯罪を助長する
第3章 ジャスコ文明と流動化する地域社会
第4章 国を挙げてつくったエセ田園都市
第5章 消費天国になった地方
第6章 階層化の波と地方の衰退
第7章 社会をデザインする地域

感想書こうと思ったけど目次のまんまの内容です。
もしかして結論先にありきかも?ってくらいで、読む前に漠然とあったイメージがうまく繋がったそういう意味では郊外化について考える上で素晴らしい本だと思います。
ただ三章の犯罪の起きた地方都市を歩いたらほとんどの街にジャスコがあったってくだりはどうか?と思うけど。多分コンビニだってあるだろうけど、コンビニのある街は犯罪が多いって言う人がいたらちょっと待てって思うし。
そういう引っかかるトコはあるんだけど、概ね正しい研究だなぁとは思います。
で、その上で気になるのがやっぱ結論というか処方箋としての七章なんだけど。
そうだよね、そうなればいいよね。としかいえないなぁ。
何か煮え切らない感想で悪いんですけど。

確か同じ洋泉社の新書で「「子」のつく名前の女の子は頭がいい」っていう新書があって、私はこの本と並んで2大センスの悪い題名の本だと思うんだけど。似てるんですよね。
あと最近読んだ「少女たちは何故Hを急ぐのか?」これもタイトルヒドイなぁ(笑)
この辺りの本の結論は同じなんですよ。人間が劣化してるっていう(泣)
何か暗にお前ら若い世代(70年代生まれ以降とでもいいましょうか)は失敗作なんだって言いたいんじゃないかなぁとか思った。
はい。認めますよ、でもしょうがないでしょそうやって生きてるんだから。
それを間違いだって言うのはいい。もっと住民がつながれるような豊かな文化を持った地域を作りましょう。はい大賛成です。
でもその流動的なファスト風土(笑)で育ってきた私たちはどうなの失敗だったの?今までの人生?って思っちゃうんですよね。
まぁこれは三浦展さんに問うてもしょうがない問題なんですけどね。
あぁ敗戦を向かえた日本人の気持ちってこんなだったんだろうなぁとか思いました。
いい本なんですけどね。

あとこの本読んでて松本大洋さんの「鉄コン筋クリート」を思い出した。
あれは匂いのある宝町(多分浅草がモデル?)って町が子供の城っていう今考えればグローバリゼーションの象徴みたいなレジャー施設が入ってくることで均質な匂いのない町に変えられてく話でその町の守護神みたいなクロとシロっていう子供が抵抗する話だったのかなぁとか思った。
残念ながら話は直接対決はしないでクロとシロの実存の問題にスライドしてしまって、それが今考えると松本大洋の限界かなぁ。宮台さんがエヴァの批判で言った世界の謎から入って個人の実存の問題になっちゃったってのと似てる。でもあの話をよく94年に書いたなぁとは思うけど。

とまぁ、郊外化に興味のある人にはハズレなしの本です。

追記・まず交通網と情報のインフラが整備されてグローバリゼーションってのがかつてあったローカルコミュニティの伝統文化と地元商店街をズタズタにして個のつながりを奪う。そもそも核家族化というのがそのはじまりで。
そうやってほとんどの人間が他者と繋がる契機を失ったトコにナショナリズムという手軽にみんながつながれるツールがやってくるって寸法なのかな。
そういや戦前も廃藩置県とか神仏撤廃とか標準語の設定とかあったっけ。
つまりナショナリズムとローカル文化って実は地続きのようでいて相性が悪く*1むしろグローバリゼーションとナショナリズムの方が相性いいのかなぁとか思った。
何か精神的に地上げされてサラチにされた日本人の精神に何建てようとしてんだ?って感じ。
ここまで見越して日本列島改造論とか交通道路の設備とかIT革命とかあったんならスゴイよなぁニッポン。

*1:まぁソコで充足してりゃ、わざわざ国家なんて大きな枠いらないもんね。よっぽど明確な敵国でもいない限り